桜と漢方薬

コラム No.101 2009年発行

 雪解けが待ち遠しい今日この頃……
もうすぐ桜の季節がやってきます。桜は眺めるだけでも十分楽しめますが、ひな祭りなどで食べる桜餅やお祝いの席で飲まれている桜湯など食用にもなり、使われ方は様々です。

 桜餅に使う葉や、桜湯に使う花びらは塩漬けされています。桜の葉や花びらは、塩漬けすると「クマリン」という物質が作られます。これが桜餅や桜湯のあの独特の香りの素となっています。

 そんな桜が漢方薬にも使われているのはご存知ですか?桜皮(オウヒ)と呼ばれ、茶筒などの工芸品にも使われる木の皮の部分が漢方薬に使われます。

 桜皮とは、日本や朝鮮半島などに分布している、ヤマザクラやソメイヨシノなどの桜の樹皮のことです。薬用には、主に幹の細いヤマザクラ(20cm以下)の樹皮を天日で乾燥させたものを使います。色は赤褐色ないし灰褐色で、つやがあり、独特のにおいがあります。味はかすかな渋みがあります。

 桜皮に含まれる有効成分には「サクラニン」や「サクラネチン」、「タンニン」などがあり、咳を鎮めたり、痰の切れを良くしたりする効果があります。抗菌・消炎効果もあり、蕁麻疹などの皮膚病や食あたりなどにも使われます。桜皮が配合されている漢方薬は十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)で、ニキビや湿疹、水虫などに効果があります。(注・桜皮の含まれていない十味敗毒湯もあります)

 このようなことを頭の片隅に置いておくと、今年のお花見はちょっと違った楽しみ方ができるかもしれませんね。
                                                  薬剤師 渡邊 敏貴