キズの手当て

コラム No.84 2006年発行

 ケガをしたとき、消毒してガーゼを当てていませんか?今までよく行われてきたその手当ては、かえって治りを遅くすることがあると最近は言われてきています。
 キズは消毒しないで、水道水でよく洗い、乾かないように覆います(最近はキズにくっつかない素材を使った絆創膏なども市販されています)。その方が治りが早く、キズあとも残りにくいのです。では、なぜ消毒しなくて大丈夫なのでしょうか?
 キズができると、白血球や血小板などを含んだ滲出液(しんしゅつえき)が傷口から染み出してきます。キズが治るためには、この滲出液に含まれる細胞が必要です。消毒は細菌を殺すため感染を防ぐのに有効ですが、キズを治すのに必要な正常な細胞まで壊してしまうことがあるのです。消毒薬を使わなくても、水道水でよく洗い流して菌を減らすことにより、感染を防ぐことができます。また、ガーゼをあてたり乾かしたりすることで、キズが治るために必要な滲出液が少なくなると、結果的に治りを遅くしてしまいます。キズは乾かさずにしめった環境にある方が、正常な細胞が増殖しやすくなり再生が早く、キズあとも残りにくくなって、きれいに早く治ります。
 ただし、キズがズキズキ痛んだり出血が止まらないときや、すでに化膿しているときには、この方法は適さないので、早めに医療機関を受診してください。砂やガラスの破片などの小さな異物が取りきれないで残っているときや、動物に噛まれたり強くひっかかれたりしてできたキズの場合にも、早めの受診が必要です。
                                                  薬剤師 野村 充代