日本の国民医療費

コラム No.95 2008年発行

 この十数年来、“日本の医療・社会保障政策は少子高齢化などにより、国民医療費(総医療費)が増大しており、このままでは社会保障制度が破綻してしまう”ということが盛んに宣伝されています。政府はそれを理由に、国の医療費(国庫からの医療費負担)を削減する一方で、国民への経済的な負担を増やしてきました。さらに、後期高齢者医療制度が2008年4月から施行される予定となっています。

 しかし、日本の医療費は抑制しなければならないほど高い水準にあるのでしょうか?

 日本の医療費に割り当てられる総額は約31兆円となっており、そのうち国が実質的に負担している金額(税)は10兆円程度です。ところが、公共事業費は医療費よりもはるかに膨大な資金がつぎ込まれており年間36兆円で、その額はG7(日・米・英・仏・独・伊・加からなる主要先進7力国)の国々と比較しても最大となっています。その内容についても無駄なものが多いことはマスコミで報道されているとおりです。
一方、日本の医療費を他国と比べてみると、2004年のGDPに占める医療費の割合は日本が80%(米15.3、英8.3、仏10.5、独10.9、伊8.4、加9.9)と、G7の中で最も低くなっています。

 社会の高齢化で、国民医療費が増加するのは事実ですが、日本の国家予算に占める医療費の割合は、むしろ他の先進国と比較すると低いレベルにあるといえます。国からの医療・社会保障給付費が抑制され続けた結果、最近では医療費の窓口負担が高く、病院にかかれないという方が増えています。
国民の税金をどのように使うのか、国民の生活と生命を守ることに使うことは正当なことであり、少なくとも世界の平均並みにすることは国家の義務ではないでしょうか。
財政のあり方について私たちは公共事業費以外にも年間5兆円の軍事費を削減することや法人税など大企業へ大幅減税してきたことを見直せば、社会保障費の財源は十分確保出来ると考えます。

 私たちの薬局ではだれでも、安心してかかれる医療を実践するために今後も、医療・社会保障制度充実の運動に取り組んでいきます。
                                                 事務員 盛 広和