逆流性食道炎

特集 No.105 2009年発行

逆流性食道炎とは?
  胃から食道へ胃液が逆流し、食道の粘膜に炎症が起こって胸焼けなどの不快な症状が出る病気です。
もともと日本人には少ない病気でしたが、高齢化、食生活の欧米化などにより近年この病気で悩んでいる方が増えてきています。
主な原因
  胃液の逆流を防ぐ機能の低下
 胃と食道のつなぎ目の部分は、食べ物を飲み込む時にはゆるんで食道から胃に食べ物が落ちるようにし、それ以外のときは食道をしめて胃の内容物が逆流しないようにする弁の働きを持っています。加齢とともにこの働きが弱くなったり、食道裂孔ヘルニア(胃とのつなぎ目の部分の固定が弱くなり、胃の一部が胸の方へはみ出した状態)や手術で胃のかたちが変わることによって起こります。
 胃が圧迫される
 肥満で腹部に脂肪がたまる、お腹を締め付ける、重いものを持つ、腰が曲がるなどの場合は、胃が圧迫されて、内部の圧力が高まり、胃液が逆流しやすくなります。
 食道の動きが悪い
 食道へ逆流した胃液を胃に押し戻すことができず、胸やけなどの症状や粘膜のただれを起こしやすくなります。
 胃液が多い
 胃液の分泌量が多いと、逆流する量が増え、食道粘膜が傷つけられやすくなります。
 食事の量が多い
 食事の量が多いと胃の働きが悪くなり、胃と食道の間が開きやすくなります。空気がでれば「げっぷ」、胃液がでれば「逆流」になります。
食道への逆流を防ぐしくみ
 
逆流性食道炎の症状
 胸焼け のどの違和感やつかえる感じ、咳がでる 胸の痛み 
酸っぱい胃液がこみ上げてくる 胃もたれ
治療   治療の中心は「薬物療法」と「日常生活の注意」です。
  薬物療法
 
プロトンポンプ阻害薬(タイプロトン®など)、H2ブロッカー(ザンタック®、タガメット®、ガスター®など)胃液の分泌を抑えることで胃液が逆流しにくくなります。
胃粘膜保護薬(アルロイドG® など)食道の粘膜をおおって逆流してきた胃液から食道を守り、自覚症状を改善します。
制酸薬(マーロックス®など)胃液を中和して食道粘膜が障害されるのを緩和します。
※医療機関によっては使用していない薬もあります。
 日常生活の注意
 胃液の逆流を防ぐために食事の内容やとり方に注意しましょう。姿勢や服装にも気をつけましょう。
 食生活の改善
胃液の逆流を起こしやすい食べ物を減らす
脂肪の過剰摂取は胃液の逆流を起こしやすいので、とりすぎないようにすることが大切です。また、胃液を増やしたり胸やけの症状を悪くすることのあるチョコレート、ケーキなどの甘いもの、アルコール、コーヒー、香辛料、酸味の強い果物、消化の悪い食べ物は、食べる量を減らしましょう。

食べ過ぎない、急いで食べない
一度にとる食事の量を減らし、腹八分目を心がけましょう。また、急いで食べると空気を飲み込みやすく、その空気で胃の内部の圧力が高まり胃液が逆流しやすくなります。

禁煙する
タバコを吸うとニコチンの影響で唾液の分泌が悪くなり逆流した胃液が流れにくくなります。

  おわりに
  逆流性食道炎は、患者さんが感じている症状が診断や治療で大切な意味を持っています。どのような
症状があるか、どのような時に症状が強くなるかなどを、細かく主治医に伝えるようにしましょう。


逆流性食道炎といわれ薬を飲み始めたら症状がおさまりました。お薬を止めても大丈夫ですか?

逆流性食道炎といわれ薬を飲み始めたら症状がおさまりました。お薬を止めても大丈夫ですか?

食道の炎症が軽く、症状もときどき起こるくらいの軽いものであれば、症状がある時だけ薬を飲むことで治療が可能なことがありますが、食道にびらん(粘膜が炎症を起こしてできた浅い傷)や潰瘍(粘膜が炎症を起こして深くえぐれたようになった状態)のできている方は、症状がなくなったあとも、びらんや潰瘍が治るまで薬を飲み続けなければなりません。また、治った後に薬を止めた時、再発しない方と再発を繰り返す方がいます。現在使われている薬では逆流を根本から治すことはできないので、薬物療法と合わせて日常生活の改善で、再発を防ぎましょう。 
自分の判断で薬をやめずに医師とよく相談し、指示にしたがって治療を進めましょう。

                                                

(薬剤師 廣田 雅子)