ロコモティブシンドロームについて

特集 No.106 2010年発行

日本の総人口のうち65歳以上の割合(高齢化率)は22.1%です(平成20年の総務省資料より)。世界で類を見ない速さで高齢社会を迎え、要介護や、寝たきりになる人は急速に増えています。要介護や寝たきりになる主な原因は、「脳卒中」や「認知症」だと言われていますが、関節の痛みや、転倒による骨折が原因となることもわかってきました。そこで最近、テレビや雑誌で注目されているのがロコモティブシンドロームです。
ロコモティブとは、もともと「機関車」、「移動」といった意味で医学的には、骨・関節・筋肉・脊椎などの体を支え、動かすためにある「運動器」をさします。加齢や運動不足、あるいは骨粗鬆症や関節炎などの病気によって「運動器」の障害がおこり、将来は要介護や寝たきりになる可能性が高い状態をロコモティブシンドロームといいます。
ロコモティブシンドロームの原因は?

1、加齢や運動不足による身体機能の衰え
私たちが普段何気なく行っている、「立つ」・「歩く」・「物を持ち上げる」など日常的な動作は、バランス能力や筋肉の働きが重要な役割を果たしています。加齢や運動不足によって身体機能が衰えると、ちょっとした事でバランスを崩し、筋力が低下しているため体を支える事ができず転倒し骨折につながります。

2、骨・関節・筋肉など「運動器」自体の病気
「運動器」の病気として多いのが、次の①~③です。
①骨粗鬆症(こつそしょうしょう) →骨がもろくなり骨折しやすくなります。
②変形性関節症→膝や脚の付け根の関節にある軟骨がすり減って変形し、体を動かす時に痛みが起こります。
③脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう) →神経が通っている脊柱管が狭くなって、手足に痛みやしびれが現れます。

ロコモティブシンドロームかどうかは、「ロコモーションチェック」略してロコチェックで確認することができます。本人の自覚が無くても、症状が進んでいる事もあります。
ロコチェック
・片脚立ちで靴下がはけない。
・家の中でつまずいたり滑ったりする。
・階段を上るのに手すりが必要。
・横断歩道を青信号で渡りきれない。
・15分くらい続けて歩けない。

1つでも当てはまる項目があれば、注意が必要です。
ロコモティブシンドロームを予防するには?
  骨粗鬆症や関節炎など病気の治療は、従来の食事療法、運動療法、薬物療法が必要です。併せて、ロコモティブシンドロームの予防や進行防止には全身の状態に合わせた、適度な運動=ロコモーショントレーニング(略してロコトレ)が必要です。家でもできる簡単なロコトレをご紹介します。ただし、治療中の病気やケガがあり、体調に不安がある時は、まず医師に相談してから始めましょう。
 



その他にラジオ体操やウォーキングなども良いでしょう。
 ロコトレは、無理をせず自分の体調に合わせて、上手に体を使うことが大切です。介護を必要とせず、自立した生活ができる「健康寿命」を延ばすためにも若いうちから注意して予防を心がけましょう。


スクワットでふらつくのですが、筋力のおちた高齢者でもできる何か良い方法は?

スクワットでふらつくのですが、筋力のおちた高齢者でもできる何か良い方法は?

スクワットは直訳すると、「しゃがむ」というような意味で、その名の通り立ったりしゃがんだりを繰り返す事によって脚の筋肉を鍛える筋力トレーニングです。体力にあわせて無理なく行うことが大切です。支えが必要な人は、机に手をついて行います。

リハビリをする時は、個人の体力に合わせ無理をしないで長続きさせることが大切です。医師や理学療法士に相談してみるのも良いでしょう。


(薬剤師 山形 茂子)