糖尿病の薬(Q&A特集) -なかなか聞けない薬の事を教えて!-

特集 No.107 2010年発行

糖尿病またはその予備軍は最新の調査によると2200万人以上いるといわれています。
糖尿病は、膵臓から出る「インスリン」というホルモンの出方が少なかったり、効き目が不十分なために慢性的に高血糖が続く病気です。放っておくとやがて腎臓障害・視力障害・神経障害などの合併症を引き起こす恐ろしい病気です。
そこで今回、薬物療法について日頃疑問に思っている事を、Q&Aの形で特集しました。
 
薬を飲んでいるのに、食事・運動療法を続けるようにといわれていますが、なぜですか?
糖尿病には1型と2型があり、日本人の糖尿病患者の9割以上が2型糖尿病です。糖尿病の治療や予防の基本は、食事療法と運動療法です。これで十分に血糖が下がらないときに補助的に薬物療法が行われます。
糖尿病治療は、食事・運動・ストレスなど生活全般を改善して取り組むべきものですから、薬を飲んでいれば大丈夫ということではありません。
また、生活改善は、高血圧、脂質異常症、また内臓に脂肪が溜まる、“メタボリック症候群”の予防との関連も注目されています。体重だけでなく腹囲の増加にも注意して、日常生活を管理するように心掛けましょう。
*1型糖尿病若い年齢からの発症が多い。遺伝や他の病気が原因でインスリンがほとんど(あるいは全く)出ないタイプ。
インスリン治療は必須。
*2型糖尿病中年期以降の発症が多い。主に、生活習慣が原因でインスリンの出方が少ないタイプと、インスリンが効きにくいタイプがある。

 
糖尿病の薬をのみ始めたら、一生やめられないのですか?
2型糖尿病の飲み薬は、一生続けなければならないというものではありません。
良好な血糖コントロールが得られている場合は、食事療法や運動療法を継続しながら、主治医の判断で、薬物療法を中止し、経過をみていく場合もあります。くれぐれも自己判断で中止しないようにしましょう。

 
薬をインスリンに切り替えたら一生注射を続ける事になるのですか?
 血糖を下げる薬をのんでいる患者さんの中には、“インスリンは最後の手段”というイメージがあるようです。
インスリンの導入には注射回数が多くて大変、針を刺すのが痛い、人目が気になる、など抵抗感を示す患者さんもいますが、今は1日1回の注射ですむ場合もあります。
2型糖尿病の場合、インスリン療法は一度始めたらやめられないというものではありません。
一時的にインスリンを使って、早期に高血糖を改善し、その後飲み薬でコントロールできるようになる場合もあります。
インスリンの働きを促す薬(オイグルコン、グリミクロン、アマリールなど)を飲み続けていると、インスリンを出す細胞が疲れてしまい、次第に薬の効果が弱まってくる『二次無効』と呼ばれる状態になることがあります。その場合は他の飲み薬を併用したり、インスリン療法を始めなければなりません。
二次無効ではなく、食事・運動療法をしていなかった為に、飲み薬の
効果が落ちていることもあるため、二次無効が疑われる場合は、食事・運動療法をもう一度見直す必要があります。
1型糖尿病では、インスリン治療を続ける必要があります。

 
低血糖を起こすのは薬の量のせいですか?
 薬の量が多すぎる場合もありますが、薬の量が変わらなくても、*低血糖を起こすことがあります。
たとえば、*シックデイや、食事時間が不規則だったり、食事の量がいつもより少なかったり、急に運動量が増えたりすると、低血糖が起こる可能性があります。
*低血糖とは…
血液中のブドウ糖が少なくなりすぎる状態
低血糖になると「異常な空腹感、あくび、だるさ、冷や汗、動悸、ふるえ、吐き気」などの症状が現れてきます。ひどくなると意識がなくなったりすることもあるので、もしかしたら低血糖かな?と思ったら、我慢しないで早めに砂糖・ジュースやキャンディなどをとって下さい。食後の糖の吸収を抑える薬(ベスタミオン、セイブルなど)を飲んでいる方は、砂糖ではすぐに吸収されないので、必ずブドウ糖をとって下さい。
血糖が低い状態が継続しているのであれば、薬の減量や変更も必要になります。
ただし、患者さんが“低くなりすぎているのではないか”と思っていても、むしろ“良くコントロール出来ている”場合もあります。
自己判断で薬を調節したり、ブドウ糖をとり過ぎたりせずに、必ず主治医に相談するようにしましょう。

*シックデイとは…
糖尿病の患者さんが治療中に発熱・下痢・嘔吐をきたし、または食欲不振のために食事ができない時を言います。


(薬剤師 広奥 智恵)