肥満 と漢方薬

特集 No.111 2010年12月発行


最近メタボリックシンドロームという言葉がよく聞かれ、内臓脂肪を減らすと生活習慣病の予防になることが知られるようになりました。「脂肪を減らす」などと、うたった薬や健康食品も多く販売されています。その一つとして漢方薬を使用する人も増えているようです。TV や雑誌等の宣伝によると「この薬を飲みさえすればやせられる」かのように見えて、購入したくなるかもしれません。しかし、薬だけでやせられる訳ではありません。肥満の原因はほとんど、食べ過ぎや運動不足から来ています。肥満の解消に一番大切なのは生活習慣の見直しであり、薬はあくまでも補助的な使用と考えてください。


また、宣伝では効果ばかりが強調され見落としがちですが、副作用のない薬はありません。市販の漢方薬での副作用も報告されています。(漢方薬の副作用についてはこちらをご参照ください。)自分で購入した薬の場合、医師の診察や検査を受けることがなく副作用に気がつきにくい、というリスクもあります。


肥満と判断する目安は?
 BMI25以上の場合、肥満と判断します。
(BMI の計算のしかたは「体重(kg)÷ 身長(m)÷ 身長(m)」です。例えば、体重72kg、身長169cmの場合、72÷1.69÷1.69=25でBMIは25となります。)
肥満の中でも特に、腹囲が女性90cm以上、男性85cm以上の場合内臓脂肪がたまっていると判断されます。
この内臓脂肪の蓄積に加えて高血圧、脂質異常症、糖尿病もしくはその前段階を重複して持っている状態がメタボリックシンドロームと呼ばれ、減量がすすめられます。


漢方薬は医師に相談を!!
  漢方薬は、医師に相談して処方してもらうことをおすすめします。
 体質に合った漢方薬を選択してもらうことでより効果的に使うことができ、副作用を減らすことができるからです。漢方医学ではひとり一人の体質や症状の現れ方など(「証」と言います)を判断し薬を選びます。同じ病名でも人によって異なる薬が適していることがあります。しかし通信販売等で自己判断で購入すると「証」の合わない漢方薬を選択してしまう可能性もあります。そのような場合、思うような効果が得られないだけでなく、良くない作用を起こしてしまうこともあるので、医師に処方してもらう方が良いのです。
 「肥満」での処方は、特に重い肥満の治療など特別な場合のみ医療保険の適応となります。生活習慣の改善だけで肥満をなくしメタボリックシンドロームを解消できるかもしれません。まず本当に薬が必要かどうか医師に判断してもらいましょう。


 ● 肥満解消の補助として使われる漢方薬 ●
 代表的な漢方薬を挙げますが、体質によってはこれ以外の漢方薬も使われます。
  
 防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)
 
こんな人に向いています注意
体力があり、固太り、便秘、お腹周りに脂肪が多い(皮下脂肪型)
むくみ、動悸、肩こり、のぼせ、高血圧
食べ過ぎや運動不足で排泄が悪く便秘
下痢しやすい人や体力のない人には不向き
妊婦や授乳婦は服用を避ける


 防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)
 
こんな人に向いています
ぽっちゃり型、水太り、色白、多汗、胃腸が弱い、下痢しやすい、関節痛、むくみ、手足の冷え、体がだるい、疲れやすい


 ● 副作用について
 漢方薬の副作用の多くは比較的軽いもので、胃部不快感や吐き気、湿疹などが多いです。
しかし、まれですが重症化すると治療が難しくなる副作用もあります。
どんな症状であっても服用中に体調がおかしいと感じたら、なるべく早く受診するようにしましょう。
  
 
気をつけたい副作用主な症状
間質性肺炎咳、息切れ、呼吸が苦しい、発熱など
肝障害体がだるい、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、吐き気、発疹、かゆみなど
低カリウム血症むくみ、尿量が減る、血圧が上がる、体がだるい、筋肉痛、しびれなど



(薬剤師 工藤 仁起子)