甲状腺について

特集 No.118 2012年1月発行

 

甲状腺とは
甲状腺は首の前、のどぼとけのすぐ下にあり、大きさが縦4.5cm、横4cmの臓器です。正面から見ると蝶の形に似ています。正常ならば甲状腺は外見ではわかりませんが、甲状腺が腫れたり硬くなっていると、触れられるようになり、のどぼとけの下やそのそばに目立つふくらみが現れます。

 

甲状腺の働き
甲状腺は、ヨウ素を原料にして甲状腺ホルモンを作っています。甲状腺ホルモンには、T3(トリヨードチロニン)とT4(チロキシン)の2種類があります。

 

甲状腺ホルモンの主な働き
・細胞の新陳代謝を盛んにする
・交感神経を刺激する
・成長や発達を促進する
甲状腺

 

甲状腺の病気
甲状腺の病気は、①「血液中の甲状腺ホルモンが低くなる病気」「血液中の甲状腺ホルモンが高くなる病気」「ホルモンの異常はないが、甲状腺が腫れてくる病気」の3つに大きく分けられます。

 

血液中の甲状腺ホルモンが低くなる病気…最も多いのが橋本病(慢性甲状腺炎)
症状

全身の代謝が低下し、「だるい、体温が低く肌がカサカサする、むくみやすく体重が増える、気力がない、物忘れがひどい、便秘」などの症状が現れます。
治療
 不足している甲状腺ホルモンを補います。
甲状腺ホルモンの薬には、T4製剤のレボチロキシンナトリウム、T3製剤のチロナミン®、乾燥甲状腺末がありますが、甲状腺ホルモン補充療法としては、主にT4製剤を使用します。

 

血液中の甲状腺ホルモンが高くなる病気…代表的なのがバセドウ病
症状
 全身の代謝が過度に高まって「よく食べるのにやせる、動悸、手が震える、暑さに弱い、汗が多い、つかれやすい」などの症状があらわれます。
バセドウ病の治療 :甲状腺ホルモンの合成を抑える「抗甲状腺薬」が中心です。
 抗甲状腺薬には、メルカゾール® とプロパジール® があります。甲状腺ホルモンの合成を抑えます。
注意
 副作用としてじんましんなどの皮膚症状がでることが比較的多くみられます。薬を飲み始めて1~2ヶ月までに出やすく、この時期に皮膚のかゆみがでても、症状が重くなければ抗ヒスタミン薬を併用して様子をみます。また、肝障害がでることもあります。
まれですが、注意を要する副作用として「無顆粒球症」があります。白血球の一種である顆粒球がほとんどなくなってしまい、重症の感染症が起こりやすくなります。飲み始めて2 ヶ月以内に多く発症することが知られていますが、長期服用中に発症することもあり、定期的な血液検査が必要です。熱が出る、のどが痛いなどの症状がでたら、無顆粒球症の可能性があるので、念のために受診しメルカゾールやプロパジールを服用中であることを伝えてください。
一時的に「ヨウ素」製剤を内服したり、動悸などの症状を抑えるために「β-遮断薬」などを併用することがあります。また、抗甲状腺薬が使えない場合や十分な効果が得られない場合には、放射線治療や甲状腺を摘出する手術が行われることがあります。

 

ホルモンの異常はないが甲状腺が腫れてくる病気
 悪性の場合は、手術で甲状腺を摘出するのが基本です。良性の場合は経過観察を行いますが、大きくなれば手術をすることもあります。

 

海藻類はヨウ素を多く含むと聞きましたが、食べるのをひかえた方が良いですか?

海藻類はヨウ素を多く含むと聞きましたが、食べるのをひかえた方が良いですか?

ヨウ素の推奨摂取量は、1日0.05~0.15mgと言われています。
日本は、海産物からのヨウ素摂取が多く、1日当たりの平均摂取量は0.5~3.0mgと言われ、必要量を大きく上回っています。ヨウ素を過剰摂取すると、橋本病やバセドウ病の原因である自己免疫反応が強くなり悪影響があると言われています。海藻類を毎日大量にとるのは避けて、バランスの良い食事をするように心がけましょう。
また、ヨウ素を含むうがい薬(ネオヨジンガーグル®;1ml中ヨウ素7mg含有)も、頻繁に使うとかなり体に入るので、かぜなどで短期間使用するのは問題ありませんが、長期に連日使用するのはひかえましょう。

主な食品のヨウ素含有量は以下のとおりです。(100g当たり)

食品ヨウ素(mg/100g)
乾燥こんぶ100~300
乾燥わかめ7~24


ヨウ素の推奨摂取量は、1日0.05~0.15mgと言われています。
日本は、海産物からのヨウ素摂取が多く、1日当たりの平均摂取量は0.5~3.0mgと言われ、必要量を大きく上回っています。ヨウ素を過剰摂取すると、橋本病やバセドウ病の原因である自己免疫反応が強くなり悪影響があると言われています。海藻類を毎日大量にとるのは避けて、バランスの良い食事をするように心がけましょう。
また、ヨウ素を含むうがい薬(ネオヨジンガーグル®;1ml中ヨウ素7mg含有)も、頻繁に使うとかなり体に入るので、かぜなどで短期間使用するのは問題ありませんが、長期に連日使用するのはひかえましょう。

主な食品のヨウ素含有量は以下のとおりです。(100g当たり)


 

(薬剤師 平川 良子)