嚥下(えんげ)困難のある患者さんの服薬の工夫

特集 No.131 2014年6月発行

脳卒中、認知症、がん、パーキンソン病など様々な病気によって、物をうまく飲み込めないなどの症状がでることがあります。
また、病気でなくても、高齢になると咽頭の位置が若い時より下がるため、物を飲み込む時食道が十分に開かず、飲み込みにくくなります。
今回は、このように物が飲み込みにくくなった状態(嚥下困難)の患者さんへの服薬の工夫を紹介します。

薬を飲むときの姿勢

私たちは薬を飲む時、水分をとるため頭を後ろに倒しますが、このような姿勢は口の中や、舌の筋肉が緊張してのどの動きが制限され、「ゴックン」と飲みにくくなります。
また、口腔と気道が一直線になるため、むせたりせき込んだりしやすくなります。
これをさけるためには、頭を後ろに倒さず飲むとよいのです。
細くて長いコップより、上部が広がった形の浅めの湯飲みを使用すると頭を後ろに傾けることなく水分をとることができます。

上部が広がった形の浅めの湯飲みを使用すると頭を後ろに傾けることなく水分が摂れます

 

水分の調整

液体は固形物より、口からのどへ速く流れます。
嚥下困難の患者さんは、飲み込みの反射が遅れがちなので、タイミングがずれて食道に入るべき水分が気管に入ってしまい、むせやすくなります。
また、薬を液体で流し込もうとしても、薬だけ口の中に残ってしまうこともあります。
こういう場合は、薬をゼリーやトロミ剤などの「すべりの良いもので包みこみ、のどへ送り込む」という方法をとるといいでしょう。

 

(オブラートを使用する方法)
杯や小さなカップなどに少量の水を入れます。
オブラートを杯の上に置き、その上に薬をのせたらオブラートを中央に折り曲げながら手早く水に浸し、そのまま杯からオブラートに包まれた薬をのみます。

 

 

(ゼリーを使用する方法)
ゼリーをスプーンにとり、その中に薬を押しこみます。ゼリーごと薬をスプーンから飲み込みます。
飲み込む時には、あごを少し引く感じにした方がのどの奥に薬が残りにくくなります。


(市販の製品の利用)
ゼリー状オブラートやトロミ剤などが市販されているのでこれらを使用するという方法もあります。

 

 

薬の形の変更

 
(粉 砕)
錠剤がなかなか飲み込めない患者さんの場合、薬局で錠剤を粉砕してもらうという方法があります。
ただし、錠剤の中には粉砕できないものがあったり、何種類もの薬を一緒に粉砕すると化学変化が起きてしまうこともあります。
また、吸湿性の面から長期の保存にはむかない、薬が一部でも変更になった場合、残っている薬があっても新しく作りなおしてもらわなくてはならない、苦味が出る薬もある、調剤に時間がかかる、などの短所があります。


(口腔内崩壊錠)
ラムネ菓子のように口の中でスッと溶けて、嚥下困難の患者さんでも水なしで、または少量の水とともに負担なく服用できる錠剤です。
このような錠剤に変更してもらうという方法もあります。
ただし、このような錠剤が発売されているのは、まだ限られたものだけなので、全ての薬が変更できるわけではありません。


(簡易懸濁法)
錠剤を少量のお湯に溶かして服用する方法です。嚥下困難の患者さんだけでなく、胃ろうなどの経管栄養の患者さんの服薬にも使える方法です。
ただし、簡易懸濁法が使えない錠剤もありますので、薬局にご相談ください。



簡易懸濁法の具体的な方法を教えてください。

  • 約55℃のお湯を30mlくらい用意し(ポットのお湯2に対して、水道水1になるように入れると約55℃になります)1回分の薬を入れて軽くかきまぜます。
  • 5~10分ほどおいておくと、薬はだいたい溶けます。
    カップの底に、薬が残った場合には少しかき混ぜてください。
  • 10分くらいたつと約37℃になりますので、適当な温度にさまして服用してください。

ポットのお湯2に対して、水道水1になるように入れると約55℃になり、薬をいれかき混ぜます




(薬剤師 在原 晶子)