夏バテ・冷房病と漢方薬

特集 No.139 2015年7月発行

みなさん、いかがお過ごしですか。夏バテなどしていませんか?


夏バテの原因には、暑さや湿気による体温調節の不調・熱帯夜などによる睡眠不足・冷たいものの取りすぎ・室内外の温度差などが挙げられます。おもな夏バテ対策としては、汗をかいたら、こまめに拭く・しっかりと睡眠をとる・冷たい飲食物の取り過ぎは控え、消化の良いものを取る・冷えを予防するなどがあります。
夏バテの原因は様々なので、それぞれに応じた対処法が必要になってきます。


さて今回は、夏バテに使われる漢方薬のお話です。

1. 熱中症の場合

暑い場所にいておしっこが出にくい、口が渇くなどの訴えがあり、意識がはっきりしているのであれば、「五苓散」(ごれいさん)が使われることがあります。これを数日服用してすっきりとしなければ、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、また下痢などの症状があれば清暑益気湯(せいしょえっきとう)が使われたりします。

 

意識がぼんやりとしてはっきりしないなどの場合は、すぐに医療機関を受診してください。

2. 冷房によるめまいや体調不良の場合

軽いめまいであれば、苓桂朮甘湯(りょうけいじゅっかんとう)+四物湯(しもつとう)が使われることがあります。

これを1ヶ月くらい続けて改善しなければ、半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)や真武湯(しんぶとう)などが使われたりします。冷房で手足が冷え、体がだるい場合は麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)、腰から下が冷えて重だるく感じる時は苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅっかんとう)、食欲不振には六君子湯(りっくんしとう)や人参湯(にんじんとう)、下痢などの症状がある場合には真武湯(しんぶとう)などが使われたりします。

あくまでもこれらは一例です。病気や体質などで服用が望ましくない場合もあるので、医師または漢方専門薬局等で相談してください。

では、他にいくつか薬の名前と効果のある症状を挙げてみましょう。

体力が落ちている方

処方名症状
十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)疲労倦怠、食欲不振、寝汗、手足の冷え、貧血など。
人参養栄湯(にんじんようえいとう)冷え、皮膚の乾燥、食欲不振、易疲労、不眠など。
大建中湯(だいけんちゅうとう)腹が冷えて痛む場合。
人参湯(にんじんとう)胃もたれ、食欲不振、みぞ落ちの痛み、下痢、疲れやすく、手足などが冷えやすいなど。

 

 

  • 体力が中くらい~落ちている方

処方名症状
藿香正気散(かっこうしょうきさん)

かぜ、暑さによる食欲不振、急性胃腸炎、下痢、全身倦怠など。

八味地黄丸(はちみじおうがん)疲れやすく、四肢が冷え、尿量が減少または多尿で、ときに口が渇くなど。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)

手足、特に足の冷えが強く、足または下腹部が痛くなりやすいなど。

 

 

  • 体力がある方

処方名症状
胃苓湯(五苓散+平胃散)
(いれいとう):(ごれいさん+へいいさん)

下痢、嘔吐、口の渇き、尿量の減少を伴うなど。

白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)のどの渇きやほてりが強いなど。

 

 

病院や診療所では採用していない薬や、薬局によっては在庫がない場合もありますので、医師や薬剤師にご相談ください。
最後に食材についてですが、夏から食欲が低下する方は、消化の良いあずきや冬瓜、ハトムギ、白菜、スイカなどが良いでしょう。
秋に疲れの出る方は、元気と水分を補う作用のあるうるち米、山芋、シイタケ、なつめ、はちみつなどが良いでしょう。

(薬剤師 佐生  明雄)

アルカリイオン水で薬を飲んでもいいの?

アルカリイオン水(以下イオン水)は‘体にいい、料理がおいしくなる’といううたい文句で愛用されている方が多いと思いますが、薬とは相性がよくありません。イオン水は、水を電気分解して得られるpH9~10のアルカリ性の水溶液で、カルシウムイオンなどミネラルが多く含まれています。そのためある種の薬の溶け方・吸収に影響が出ることがあります。
たとえば、一部の抗生物質の吸収が悪くなったり、胃酸を中和するので、本来腸で溶けて効果がでるはずだった薬が胃で溶けてしまい、効き目が出るどころか副作用が出てしまうといった状況も考えられます。
薬はpH7付近の水で服用することを想定して作られているため、イオン水で服用した時の薬剤の効果についての具体的なデータは今のところありませんが、イオン水での薬の服用は避けていただいたほうが良いです。

(薬剤師 平岩  哲朗)