高齢者のうつ病

特集 No.87 2006年発行

うつ病とは
 うつ病は、日常生活のストレスや環境の変化などをきっかけに、脳の働きが低下し、こころやからだの不調を来たす病気です。日本人の15人に1人はうつ病にかかるといわれ、決して珍しい病気ではありません。
うつ病は、れっきとした病気なので、「気の持ちよう」では治すことはできませんが、治療により治すことができます。うつ病と気付かずにそのまま放置しておくと、自殺に至る危険性もあるため、早期発見・早期治療が大切です。
高齢者のうつ病
 高齢になると、体の機能が衰え、退職や子供の独立などでこれまでの社会的役割を失うなど、うつ病になるきっかけが多くなります。ところが、高齢者ではうつ病の症状と認知症の区別が難しく、単なる「年のせい」と勘違いされるなど、うつ病の初期症状を見逃されることもあるようです。
高齢者のうつ病の特徴は、抑うつ気分などのこころの症状よりも、「疲れやすい」「あちらこちらが痛い」などのからだの症状を訴えやすいことです。また、症状が軽くても「自分はもうだめだ」と悲観的になる傾向があります。
うつ病と認知症のちがい

認知症

徐々に進行する
理解力の低下を「ごく軽い」と言う
出来たつもりである
課題をやり遂げようとする
正解から少しずれた答えをする

うつ病

短期間に発症し、進行は早い
理解力の低下を「おおげさ」に言う
失敗を誇張する
簡単な課題もやる気が乏しい
「わからない」という答え方をする

うつ病の治療
十分な休養と医師の指示による適切なくすり(抗うつ薬)の使用が大切です。
・多くは入院の必要はなく、通院治療が可能です。
・治る過程は一直線ではなく、一進一退を繰り返しながらよくなっていきます。
抗うつ薬を飲むときに気を付けること
薬の効果が現れるまでには時間がかかる
薬の種類にもよりますが、およそ2~4週間かかります。効果がないからといって途中で服用を中止しないようにしましょう。
症状が良くなっても、しばらく服用を続ける
急な服用中止によりうつ病が悪化しやすくなります。症状がおちついても、しばらくは薬の服用や通院を続けましょう。服用を中止する場合は医師の指示に従って徐々に薬を減らしていくことになります。
副作用が出たらまずは相談する
抗うつ薬の飲み始めに、吐き気やめまいなどの副作用が現れる場合がありますが、しばらく飲んでいるとなくなります。また、その他の副作用が出ても、自己判断で勝手に止めないで、すぐに医師・薬剤師に相談して下さい。
周囲の方へ
高齢者の場合、生活の補助をし、不安感を取り除くことが必要です。
本人の「つらさ、悲しみ」などの気持ちをよく理解し、ゆっくり休んでもらい、長い目でみてあげることが大切です。
「がんばれ」などの励ましは逆効果。本人のペースを大切にして下さい。
「死にたい」などの自殺のサインは見逃さずに、医師に相談しましょう。
  薬剤師 高地 章江

うつ病かもしれないと思ったら、何科にかかればよいですか?

 うつ病を専門に診ているのは、精神科、神経科、心療内科などで、総合病院、個人のクリニックなどさまざまな医療機関があります。まずは、かかりつけの医師に相談することをお勧めします。本人が受診に消極的な場合は、ご家族の方が付き添って代わりに相談されるのも一つの方法です。
                                              薬剤師 高地 章江