ステロイド外用剤について・・・(Q&A特集) 特集 No.96 2008年発行 ステロイドとは何ですか? ステロイドとは副腎皮質ホルモンというホルモンのことで、体が健康な状態を維持するために重要な働きをしています。ステロイドには強力に炎症を抑える作用と免疫の働きを弱めてアレルギー反応を抑える作用があります。この作用を利用して、ス テロイドを含んだ外用薬はアトピー性皮膚炎をはじめ色々な皮膚疾患に使用されています。 ステロイドには色々な種類がありますが、どのように使い分けていますか? ステロイドにはWeak(弱い)からStrongest(最も強い)まで5段階の強さがあります。外用剤とはいえ塗ったところはもちろんのこと全身性の副作用もまれにあります。一般的には炎症の強さや塗る場所によって使い分けます。皮膚の薄い顔、首、わき、外陰部では薬を吸収しやすいため、弱いステロイドを使用します。手のひら、足の裏など、皮膚の厚いところは吸収しにくいため、強めのステロイドを使用します。 また、皮膚の薄い小児や、皮膚の新陳代謝が遅い高齢者は薬が残りやすいため強いステロイドを必要としない事が多いです。 クリームや軟膏などの違いは?軟膏→油脂性でべたつきやてかりがあります。皮膚を保護したり、軟らかくしたり、新しい皮膚を作るように促す効果も期待できます。 刺激が少ないので、乾いた場所でも、傷が乾燥していないところでも使えます。クリーム→ 軟膏よりも水分が多くサラッとしていて使用感が良いです。 しかし、軟膏に比べると時に刺激感があるため、ジュクジュクしたところには使用できません。ローション→液状で伸びやすく、軟膏やクリームで塗りにくい頭部、爪などに使われます。テープ→密封療法という方法で強力に効かせたい時や手術などでできた盛り上がった傷、ケロイドに使います。また、テープを貼る事により、ひっかくことや水仕事から患部を守ることもできます。長時間にわたって貼ると毛のう炎などを起こすことがあるので、就寝時に貼り、翌朝はがす方法が薦められています。 副作用が心配です。 副作用としては、主に塗ったところに下の表のような症状が出ることがありますが、中止するとほとんどのものが回復します。全身性の副作用はまれです。医師の指示通り正しく使うと副作用はほとんど起こりません。自己判断で急に止めた時に、元の症状が悪化することもあるので(リバウンド)医師の指示に従って使用することが大切です。副作用症状赤ら顔皮膚の毛細血管が広がるために赤くなります皮膚が薄くなる・出血する皮膚が薄くなり、出血することがありますにきび皮膚の免疫力が下がり、細菌が繁殖しやすくなり、にきびや吹き出物ができやすくなります 適量はどれくらいですか? 両方の手の平くらいの範囲に塗る場合、目安として5gチューブで人差し指の先端から第一関節まで出すと大体0.5gになり、この量を伸ばすくらいが適量です。ローションだと、1円玉程度の量に相当します。 妊娠中や授乳中でも使って大丈夫ですか? 専門医の診断のもとに使用すれば安全です。 ステロイド外用剤の使用により奇形児を出産したとの報告はありません。ただし、動物実験で奇形作用が報告されている事から、「妊婦又は妊娠している可能性のある場合は大量又は長期にわたる広範囲の使用を避ける事」とされているものもありますが、ほとんどの薬は安全です。必要な強さの薬剤を最低限使うことが重要となります。 授乳中の場合も同様です。大事なことは、「ステロイドを恐がって塗る量を少なくしないこと」「しっかり炎症がとれるまで医師に指示された通り使うこと」です。皮膚科では妊娠中に使っても安全な薬を使用しますので必ず専門医に相談しましょう。 (薬剤師 三河 美幸) ひまわり通信一覧に戻る