麻疹(はしか)について

特集 No.98 2008年発行

2008年度から、中学1年生・高校3年生を対象に、2012年度までの5年間に限り、公費負担(無料)でMR(麻疹、風疹混合)ワクチンを接種できるようになりました。

麻疹は一般に小児期に多い急性の感染症として知られていますが2007年、10~20歳代を中心に札幌を含め大流行した地域があり、高校・大学などの休校が相次ぎました。

過去10年でみると徐々に患者数は減少していました。2007年度に入り、小児(15歳未満)の患者数は例年に比べ、それほど増加していないにもかかわらず成人(15歳以上)の患者数は大幅に増加しました。
原因として
 ・10~20歳代の人の中には一度も麻疹ワクチンを接種していない人がいること
・麻疹ワクチンを1回接種しても、数%程度の人には十分な免疫がつかないこと
・現在の10~20歳代の人で、幼少時にワクチンを接種しても麻疹ウイルスにさらされる機会が減少したため、免疫が強化されず徐々に弱まってきている人がいること
などが考えられます。
 
麻疹の症状
 ウイルスに感染後、約10~12日潜伏期間があり、その後発熱、咳、鼻汁、目やになどの結膜炎の症状が出ます。3~4日は38℃前後の熱、上記症状が続き、また、麻疹に特徴的なコプリック斑という口内炎が頬の内側の口腔粘膜に現れますが、発疹出現後、2日以内に消失します。
熱が一時1℃位下がりかけたかと思うと半日くらいでまた39~40℃の高熱となり、首すじや顔などから赤い発疹が出始め、その後全身に広がります。高熱は3~4日で下がり、次第に発疹も消失しますが、しばらく色素沈着が残ります。30%程度合併症を引き起こし、中には入院が必要になり、肺炎や脳炎で1000人に1人の割合で死亡することもあります。
ワクチンの安全性と効果
 ワクチンには副反応があり、発熱・発疹・接種部位の腫れがみられることがありますが、いずれも通常数日中に消失します。稀に重い副反応もありますが、自然の麻疹ウイルスに感染し、発症する確率よりずっと低いものです。ワクチン接種による免疫獲得は95%以上と、高い有用性があります。
麻疹の症状は重く、且つ、現在札幌などで流行していますので、今年の公費対象者のみではなく、他の学年の子どもたちにもワクチンを早めに接種する事をお勧めします。また、20~30歳代の大人でも、心配な方は抗体検査を受け、免疫がなければワクチンを接種した方が良いでしょう。この場合は有料で、医療機関により異なりますが、1万円前後かかります。また、過去に麻疹あるいは風疹のどちらかにかかった人はかかっていない方の単独ワクチンかMR ワクチンかを選択することができます。予防接種に関する問い合わせは各地区の保健センター、予防接種実施医療機関で受け付けています。

 

中学1年生・高校3年生を対象に公費負担で行われるこのワクチンは、なぜ5年間限定なのですか?

中学1年生・高校3年生を対象に公費負担で行われるこのワクチンは、なぜ5年間限定なのですか?

2005年度まで麻疹の定期予防接種は1歳時の1回だけでした。しかし、2006年度から、MR(麻疹・風疹混合)ワクチンの形で、1歳と小学校入学前の年の2回接種が基本となりました。若年層において今年度小学3年生~高校3年生までの人がこの2回接種の枠からはずれるため、今年度から5年間で2回目の接種ができるようにしたものです。


(薬剤師 斎藤 恵子)