お酒(アルコール)と薬

特集 No.189 2023年11月発行

11月半ばのボージョレ・ヌーヴォーの解禁や、年末年始にかけての行事やイベントでお酒を飲む機会が多くなると思われます。

お酒を飲んでしまったけど薬を飲んでも大丈夫かなと気になったことはありませんか?


今回はアルコールの薬への影響についてお話します。


アルコールは肝臓や体のさまざまなところに影響するため、薬と一緒に飲むと薬の吸収や分解の速さを変えてしまいます。

さらにアルコールは中枢神経のはたらきを抑える薬の作用を強め、副作用が起こりやすくなることがあります。
また、薬と一緒に飲むことでアルコールの分解を遅らせてしまい、アルコールの酔いが非常に強くなって悪酔いすることもあります。

以下の薬を服用中の方は特に注意が必要です。

(※これらの薬以外でも、全く影響が無いということではないので気をつけてください)


睡眠導入劑(寝つきをよくする薬)

薬の効き目が強く出るため副作用が出る可能性があります。
よく寝られそう、と思ってしまうかもしれませんが、翌朝まで眠気が残り意識がもうろうとしたり、ふらつきや転倒等が起こる危険が高まります。
また、アルコール自体も眠くなることがありますが、その後睡眠を浅くし、結果的に睡眠の質を低下させてしまう可能性があります。



抗不安薬、抗うつ薬

薬が効きすぎて幻覚、手の震え、食欲不振などが起こることがあります。

また、アルコールにも中枢神経の働きを抑える作用があり、薬の効果と合わさって眠気や認知機能、運動機能の低下を起こしやすくなることがあります。



糖尿病薬(血糖を下げる薬)

薬が効きすぎて低血糖状態になることがあります。
また、アルコールを多く飲むと肝臓で糖を作る機能が抑えられ、低血糖が起きやすくなったり、低血糖からの回復が遅れることがあります。

寝る前にアルコールを飲むと夜間の低血糖が起きやすくなるとも言われています。
さらに、低血糖が起きた時にも酔っていて正常な対処ができない恐れもあります。
メトホルミンを飲まれている方は多量のアルコールを飲むと脱水を起こしやすくなり危険です。



抗血栓薬(血をサラサラにする薬)

薬が効きすぎてアザができやすくなったり、血が止まりにくくなったり、胃や腸からの出血や脳出血を起こす等の危険性が高くなることもあります。
ワーファリンでは薬の効き目が弱くなることも強くなることもあります。



降圧薬(血圧を下げる薬)

薬が効きすぎて血圧が急激に下がってめまいを起こしたり、動悸、頭痛等を起こすことがあります。
また、アルコール自体にも血管を拡張する作用があるため薬の効果と合わさって血圧が下がり過ぎることがあります。



解熱鎮痛藥(熱や痛みを抑える薬)

胃が荒れやすくなることがあります。

また、アセトアミノフェンではごくまれに肝機能障害を引き起こすこともあり、アルコールを多く飲んでいると肝臓の負担がさらに大きくなるため、注意が必要です。
風邪薬や頭痛薬等の市販薬にもよく含まれているものなので気を付けましょう。


普段のお酒を飲む量と薬への影響

普段からよくお酒を飲んでいる方は、肝臓の中の薬を分解する酵素の量が他の人より多くなる傾向があり、薬の分解が速まり、薬の効果が弱まることがあります。
また、逆に普段お酒を飲まない人が一度に多量のお酒を飲むと、薬を分解する酵素がアルコールを分解してしまうことで薬の分解が遅れ、薬の効果が急激に強くなることがあります。


飲酒前後に薬を飲む時はどうしたらよいか?

薬を飲む時はアルコールを飲まないのが1番よいですが、晩酌の習慣や行事やイベント等でどうしても飲むこともあると思います。
定期薬を飲まれている方は、アルコールを飲む時の対応について、まずは事前に医師や薬剤師に確認、相談しておくとよいでしょう。

また、時々症状のある時だけ薬を飲む方は、薬とアルコールを飲む時間をあけることで薬への影響を避けられることもあります。
飲酒後に薬を飲む場合はアルコールの影響を避けるため、飲んだアルコールの量に合わせた間隔を空けて、コップ1杯以上の水で飲むのがのぞましいでしょう。
体重60kgの成人男性で体内からアルコールが消失するまでアルコール1単位(*表参照)で3~4時間、2単位で約6~7時間かかると言われています。(※個人差もあり、体質や体重、性別等によっても異なります)


表:アルコール1単位の目安(カッコ内は一般的なアルコール度数)

ビール(5%)

中瓶1本(500mL)
日本酒(15%)

1合(180mL)

焼酎(25%)

0.4合(約80mL)

ウイスキー(43%)

ダブル1杯(60mL)

ワイン(12%)

4分の1本(約180mL)

缶チューハイ(7%)

ロング缶1缶(500mL)

薬の服用後に飲酒する場合、薬の影響が少なくなるまでの時間は薬によって異なり、一概にはどのくらい、とは言えません。

日頃よりお酒を飲む量はたしなむ程度(アルコール1単位分以下)とし、お酒を飲む時間と薬を飲む時間は近くならないようにしましょう。

ご不明な点がある時はご相談ください。

(薬剤師 棚橋 聡子)

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