心不全と自己チェック

特集 No.193 2024年7月発行

心不全ってどんな病気?


心臓には、全身に血液を送り出すポンプの役割があります。このポンプの力が弱くなり必要な量の血液を送り出せなくなった状態を「心不全」といいます。
必要な量の血液が送り出せないと血液の流れが悪くなり、ある臓器では血液の渋滞(うっ血)が生じ、またある臓器では酸素不足(虚血)が生じます。
その結果、さまざまな症状が出現することになります。
一度心不全になると、悪化と回復を繰り返し、徐々に病状が進行していきます。
進行を防ぐためには、適切な治療に加えて、運動や食事など生活習慣の改善が重要です。

心不全の主な原因は?


心不全の原因は様々です。

心臓の血管が詰まってしまう「心筋梗塞」、心臓の筋肉が異常になる「心筋症」、心臓の部屋を区切る弁に異常が出る「弁膜症」、脈が乱れる「不整脈」など多くの心臓の病気が心不全の原因となりうるので、注意が必要です。
また、高血圧や糖尿病、脂質異常症といった病気や、動脈硬化・肥満・腎機能の低下は心不全の発症や進行に大きな影響を及ぼします。



心不全の症状は?


十分に血液(酸素)を送り出せないので…

 からだに必要な酸素が足りなくなり、息切れがしたり疲れやすくなったりします。

 細い血管に血液がいきわたらなくなり、手足の先が冷たく、肌の色が悪くなります。


血液をうまくからだ中にまわせなくなるので…

 水分が体内にたまり、体重が1週間で2kg以上増加することがあります。

 特に足の甲やすねのあたりがむくみます。

 肺に血がたまる(肺うっ血)と水分が肺にしみだし、さらに進むと酸素が足りない状態になるので、安静にしていても呼吸が困難になります。

日常生活で注意すること



 嚥下障害時の服薬について塩分を控える

食塩をとりすぎると血圧が高くなり、心臓に負担をかける原因となります。
食塩の摂取は1日6~7g以下を目安として減塩を心がけましょう。

 薬を勝手に中断しない

症状がよくなっても、心不全が完全に治ったわけではないため、お薬を勝手にやめてしまうと症状が悪化してしまうことがあります。自己判断で薬の中断は決してしないでください。

 節酒

お酒を飲みすぎると、体内の水分バランスが崩れ、血圧も上がり、心臓に負担がかかります。
お酒は適量(アルコール20g以下)の範囲内で、楽しむ程度に控えましょう。

 感染症を予防する

発熱をきっかけに心不全が悪くなることがあるため、手洗いやマスクなど、感染症の予防を心がけ、必要な予防接種をうけましょう。

 禁煙

喫煙は血管や心臓の筋肉を傷つけ、血圧や心拍数を上げてしまいます。心不全を悪化させないためには、禁煙が必要です。
ご家族やまわりの人が吸っていても影響を受けますので、周囲の人にも伝えましょう。

 ストレス緩和と睡眠

心不全は、病気そのものの心配のほか、生活の変化や金銭的な負担などによりストレスを抱えやすい病気です。
心配なことや気になることを一人で抱え込まずに、話しやすい人に相談しましょう。また、規則正しい生活を心がけて、十分な睡眠や休息をとりましょう。

 入浴

温かい部屋から急に冷えた浴室に入ると、血圧が急に上がるため危険です。入浴前には、脱衣所や浴室等を温かくしてから入りましょう。

入浴時、湯船のお湯が熱すぎたり、深く長くつかりすぎたりすると心臓に負担がかかります。

ぬるめのお湯(40~41度)に胸ぐらいまでつかり、10分以内にとどめましょう。
洗髪する時は、心臓を圧迫するような前かがみの姿勢ではなく、シャワーを使うようにしましょう。


心不全の自己チェック


心不全の初期には以下のような症状が出ます。思い当たる症状がありますか?
チェックしてみましょう。

 階段の昇降や、重い荷物を持つと息切れがする
横になると息苦しい(体を起こしていると楽になる)
疲れやすい
 手足や顔がむくむ
体重が急に増えてきた
息苦しくて目が覚める、よく眠れない
食欲が落ちてきた
夜中にトイレに起きることが多くなった


上記のような症状がいくつかありましたら早めにかかりつけ医または医療機関にご相談ください。


(薬剤師 高田 亜希子)

※記載された情報は発行日時点の情報です。
ご覧になった時点と情報が異なる可能性もありますので、あらかじめご了承ください。