低温やけど

特集 No.196 2025年1月発行

寒い冬を乗り越えるために、様々な防寒グッズや暖房器具が使われているかと思います。寒ければ寒いほど、暖房の暖かさは心地よく、長時間使うことが多くなると思います。そこで、防寒グッズや暖房器具を使う上で注意しておきたい「低温やけど」についてご紹介します。

低温やけどとは


熱いものに触れることで起こるやけどのうち、比較的低い温度によって起こるやけどを低温やけどと言います。
暖かくて気持ちが良いくらいの温度でも44℃では3~4時間、46℃では30分~1時間、50℃では2~3分ほどで症状が出てきます。


カイロや湯たんぽや電気カーペットなどでも、長時間肌に密着することで低温やけどを起こすことがあります。


熱湯のように熱いものであれば、反射的に手を離したりしますが、低温やけどは気付かないうちに症状が進んでいき、重症のやけどを起こすことがあるので注意が必要です。

やけどの分類


やけどは皮膚に与えられたダメージの深さでⅠ度、Ⅱ度、Ⅲ度に分けられます。


Ⅰ度は表皮までのやけどで、日焼けのようにヒリヒリした痛みや赤味などの症状がでます。ほとんどの場合は、痕など残らずに治ります。


Ⅱ度は表皮の下の真皮層にまでダメージが届いたやけどで、水ぶくれができて強い痛みも出てきます。Ⅱ度の中でも真皮層の深いところまで届くと、痛みを感じる神経までダメージを受けて痛みを感じにくくなることがあります。


Ⅲ度は皮下組織にまでダメージが達したやけどで、皮膚の障害が強く、痛みを感じなくなりますが、やけどの周囲は強い痛みを感じます。自然に治りにくく、手術などが必要な場合があります。

低温やけどの対処法


痛みや赤味や水ぶくれといった症状が出て低温やけどに気づいたときには流水で10~30分を目安に冷やします。ただし、低温やけどは見た目には軽い症状でも、皮膚の深いところまでダメージが出ている場合があります。そこまでいくと、患部を冷やすなどの応急処置があまり効果的でない場合があります。低温やけどかと思ったら皮膚科や形成外科などの医療機関を受診して、治療を受けることをお勧めします。


水ぶくれができているときは、水ぶくれをつぶすと雑菌が入って細菌感染を起こすことがありますのでつぶさないようにしましょう。

低温やけどの予防法


防寒グッズや暖房器具の説明書に記載された使用方法を守りましょう。


カイロであれば、直接皮膚に触れないようにします。湯たんぽであれば、寝る前に布団を温めるのに使って、寝るときには布団から出します。電気カーペットであれば、座布団を敷いて直接触れないようにするほか、設定温度を低めにしたり、タイマーで定期的に電源がオフになるようにしたりすることで低温やけどのリスクを減らせます。


暖房器具ではないですが、スマートフォンの長時間使用やスマートフォンの充電器の発熱によって低温やけどを起こすこともありますので熱くなるようならいったん使用を止めて冷ますようにするのが良いでしょう。

(薬剤師 石川 知樹)

やけどを冷やすときはできるだけ冷たいほうがいいの?

やけどを冷やすときはできるだけ冷たいほうがいいの?

氷や氷水のように冷たすぎるものでは凍傷を起こし、かえって皮膚を傷つけることがあります。
水道水の流水で痛みがなくなるまで冷やしてください。

ドライアイスに触って水ぶくれができたけど、これって低温やけど?

ドライアイスに触って水ぶくれができたけど、これって低温やけど?

ドライアイスで起こるやけどのような症状は凍傷です。凍傷でも皮膚の細胞が壊れることでやけどと似たような症状が出ますが、冷やしてしまうと悪化する可能性があります。
凍傷の場合はぬるま湯で温めるようにしましょう。

(薬剤師 石川 知樹)

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