歯周病

特集 No.202 2026年1月発行

歯周病とは、歯と歯ぐきの隙間に侵入した細菌によって歯ぐきに炎症が引き起され、さらに進行していくと歯を支える骨を溶かしてしまう病気です。


歯周病の原因


歯と歯ぐきの境目など清掃が行き届きにくい場所には多くの細菌が停滞しやすくなり歯垢(プラーク)と言われる細菌の塊からなる粘着物が作られます。

プラークにいる細菌が産生する毒素によって、歯ぐきが腫れたり出血しやすくなります。

この状態が続くと歯周ポケットが徐々に深まりやすくなります。

歯周ポケットが深くなると歯周病原因菌の繁殖しやすい酸素の少ない状態になるため、菌の繁殖はさらに進み歯周病が悪化していきます。
※中には歯ぐきの腫れが現れず自覚症状なく歯周病が静かに進行していくケースもあります。

歯周病の進行


主な原因の一例

腹痛を予防する生活習慣

腹痛を予防する生活習慣

※歯周病原因菌が産生する毒素や炎症によって、免疫細胞から出されるタンパク質などが毛細血管を通じて全身に広がると心臓血管疾患、脳卒中(脳梗塞)、糖尿病の悪化など、様々な病気を引き起こす危険性を高めることが分かってきました。
また、唾液の中に混じった歯周病原因菌が誤って気道から気管支、肺の方に入ると、気管支炎、肺炎(誤嚥性肺炎)の原因になることがあります。

喫煙と歯周病の関係


喫煙者は非喫煙者に比べて歯周病にかかりやすく、悪化しやすいことがわかっています。

たばこの煙や成分は、口の中に入ると粘膜や歯ぐきから吸収されます。吸収されたたばこの有害物質は、血管を収縮し、歯ぐきの血流量を減少させます。血液循環が悪化して歯ぐきに十分な酸素がいきわたらなくなると、歯周ポケットの中で歯周病の原因となる細菌が繁殖しやすくなります。

通常は歯周病が進行することで歯ぐきから出血しやすくなりますが、喫煙者では血管収縮による血行不良により、歯ぐきの出血や腫れが分かりにくく気づかないうちに歯周病が進行していくケースがあります。


この他に歯周病が進みやすい因子は数多くあります。


  • 口の中の清掃不良
  • ストレス
  • 歯科医への受診回数の低さ
  • 年齢
  • 糖尿病
  • かみ合わせ
  • 歯ぎしり

歯周病の予防


歯磨き


歯周病の原因となる歯垢を歯磨きで取り除きます。特に歯と歯ぐきの境目などを意識した磨き方が重要です。
詳しい磨き方は歯科受診で専門家のアドバイスを受けましょう。


歯科受診


毎日の歯磨きでも歯ブラシが届きにくい場所は必ず存在します。
取り除けなかった歯垢は唾液中に含まれるカルシウムなどによって石灰化し、歯石になります。
歯石を取り除くには歯科受診が必要になります。


生活習慣


口の中には数百種類の細菌が存在し共生していますが、免疫機能が弱まると歯周病原因菌が活発になり歯周病が進行します。
不規則な食生活や睡眠不足、ストレスは免疫機能が弱まる原因になります




規則正しい生活と十分なストレスケアを行い、歯を大切にしましょう。

そして定期的に歯科検診を受けましょう。


(薬剤師 佐々木 康行)

歯槽膿漏は歯周病のこと?

歯槽膿漏は歯周病のこと?

歯槽膿漏は歯周病の中度・重度歯周炎のことです。
かつて日本では、歯ぐきが腫れて膿(うみ)が出て、歯がグラグラする状態を「歯槽膿漏」と呼んでいました。
しかし、現在は国際的な歯科医学の基準に合わせて「歯周病」という名称が使われています。このため歯槽膿漏という言葉は医療分野で使われなくなりました。

(薬剤師 佐々木 康行)

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