残薬と医療費について

コラム No.152 2017年9月発行

病院や薬局から交付された後、何らかの理由によって自宅に余ってしまったお薬の事を残薬(ざんやく)と呼びます。


薬が余っている事実は、いつも診察してくれる医師・薬剤師には話しにくいものですが、事実を伝えないでいると、医師は指示通り服用できていると思ってしまいます。

 

例えば、高血圧症の方が薬を飲み忘れることが多く、診察時にいつも血圧が高かったとします。医師は薬の効果がないと思い降圧薬を追加するかもしれません。本当は飲んでいなかった薬と追加の薬も飲んでしまうと、血圧が下がりすぎて、ふらついたり転倒してしまうかもしれません(これを有害事象と言います)。これは患者さんにとって好ましい状態とはいえません。


平成27年度の医療費の動向(厚生労働省の調査)によると、医療費の総額は41.5兆円で、そのうち約6兆円が薬剤料(薬の費用)でした。残薬を減らすことができれば、薬剤料を数百億~3000億円程度削減できるだろうと言われています。患者さんと医師、薬剤師が協力して取り組めば、有害事象だけではなく、残薬を減らし医療費を削減することができます。

 

(薬剤師 五十嵐  栄一)

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