冷え症と漢方薬

特集 No.159 2018年11月発行

冷え症で悩む方は多く、冷えは全身に感じる事もありますが、手足や腰、背中などの部分的に感じる場合も多いです。
現在、西洋医学では冷え症という病気の分類はなく、漢方治療は、はっきりとした原疾患が不明の場合に、自覚症状の改善に効果が期待できます。


漢方薬は、体質や状態、冷えに伴う他の症状などから決まります。

ただ、冷え症というのは長い間に少しずつ進行してきた症状ですから、短期間で症状が改善するものではありません。時間をかけて治療をしていく必要がありますし、漢方薬の服用だけではなく、身体が冷えるような生活を冷えにくい生活に変えていくことも大切です。

現代生活と冷え症

現在の生活が身体の冷えにどのような影響を及ぼしているか考えてみます。
足や身体を締め付ける靴や衣服を身につけると、血液の流れが悪くなって冷えてきます。同様にストレスがかかると神経が緊張し血管が収縮して血液の流れが悪くなり冷えます。


では、食事はどうでしょうか。アイスクリームや炭酸飲料など、糖類を多く含んだ身体を冷やす飲食物が多くなりました。また、農業が発達してキュウリやトマトなど夏にとれる野菜を真冬でも食べられるようになりましたが、これらの野菜は身体を冷やすので、冷え症の方は寒い季節に食べ過ぎないよう注意しましょう。

冷え症を防ぐおすすめの生活

寝る時に保温のため靴下や腹巻の着用も重要ですが、血液の流れを妨げないよう、ゆるめのものにしましょう。
入浴は、身体を温めて血液の流れをよくするので、できれば毎日入るとよいでしょう。大切なのは、少しぬるめのお湯に汗が出るまでつかることです。ただし、心臓に持病のある人に長湯は禁物です。このような方は、半身浴にすると心臓の負担が少なくなります。
冷え症を引き起こす原因に、生野菜を食べることがあります。生野菜には多くの水分が含まれ、その水分が身体を冷やすといわれています。

生野菜は加熱すると身体を冷やさなくなるのですがビタミンなどは失われるので、比較的損失の少ない電子レンジなどで加熱調理して食べるのがよいでしょう。

症状と漢方薬選択の考え方

冷えを伴う症状に用いる漢方薬は大変多いので、充分主治医とご相談ください。冷えの部位とそれに伴う症状によって、よく使われる漢方薬を掲載しています。(病院・診療所によっては使用していない薬も掲載しておりますのでご注意ください。)


① 手足の冷えが強いタイプ(上半身のぼせ(冷えのぼせ)を伴う場合もあります)

胃腸が虚弱で体格は痩せ型〜中等度

処方名特徴的な症状
当帰四逆加呉茱萸生姜湯しもやけ、腰痛、坐骨神経痛、下腹部痛、嘔吐など
桂枝加朮附湯四肢や身体の痛み・痺れ、関節痛、むくみなど
五積散冷えのぼせ、腰痛(起床時に強い)、頭痛、悪心など


胃腸が丈夫で体格はやや痩せ型〜がっしり型

処方名特徴的な症状
八味地黄丸夏は足がほてり冬は冷える、腰痛、排尿異常、口渇など
桂枝茯苓丸体力があり、冷えのぼせ、下腹部痛、頭重、眩暈、肩こりなど
桃核承気湯上の症状に便秘、腰冷えなど



② 全身が冷えるタイプ(低体温、顔色不良、胃腸虚弱など)

胃腸症状が主な場合

処方名特徴的な症状
人参湯下痢傾向、足冷え強い、口に唾液がたまる、腹痛、嘔吐など
大建中湯ガスが溜まり易い、腹冷え、腹痛、嘔気、下痢、便秘など
六君子湯食欲不振、胃もたれ、胃痛、嘔吐、下痢、疲れ易いなど


全身症状が強い場合

処方名特徴的な症状
真武湯顔面蒼白、全身倦怠、水様下痢、動悸、腹痛、眩暈など
十全大補湯全身衰弱、疲労倦怠、食欲不振、寝汗、貧血、顔色不良など
八味地黄丸夜間頻尿、腰痛、疲れやすい、倦怠感、腰から下の脱力感など



③体温正常タイプ(体温は普通で、自覚症状のみのタイプ)

処方名特徴的な症状
加味逍遥散顔のほてり、肩こり、便秘傾向、眩暈、頭痛、不眠、不安など
柴胡桂枝乾姜湯不安、不眠、貧血気味、動悸、息切れ、疲労倦怠感、口渇など
抑肝散加陳皮半夏イライラ感、気分の沈み、不眠、不安、動悸、悪心など


(薬剤師 佐生 明雄)

漢方薬は長く飲まなければ効きませんか?

すぐに効果の期待できる漢方薬もあります。頓服で即効性が期待できる漢方薬としては下記の例があげられます。

お湯に溶かして服用する方が吸収は良く効きめも早いのですが、吐き気のある時や飲みづらい時は冷ましてからまたは顆粒のまま服用します。



すぐに効果の期待できる漢方薬の例

症状処方名
こむらがえり芍薬甘草湯
咳きこみ清肺湯、麦門冬湯、麻杏甘石湯など
鼻炎小青竜湯、麻黄附子細辛湯など
めまい発作時苓桂朮甘湯
吐き気呉茱萸湯、五苓散、小半夏加茯苓湯など
悪心、嘔吐など茵蔯五苓散、黄連解毒湯、黄連湯など

(病院・診療所によっては使用していない薬も掲載しておりますのでご注意ください。)

(薬剤師 佐生 明雄)