フレイルを知って介護予防

特集 No.163 2019年7月発行

フレイルとは

フレイルとは

フレイルとは、英語の「frailty」からきていて、虚弱という意味ですが、医療の現場では「健康な状態と介護が必要な状態の中間の時期」のことを言います。フレイルという状態を知って、高齢者ご本人やご家族が介護予防に役立てることができると、健康寿命を長くすることができます。


高齢者はフレイルになりやすく、フレイルの状態になると、風邪をこじらせて肺炎になったり、転倒して打撲や骨折を起こしてしまったり、そのことをきっかけに介護が必要になる場合があります。しかし、早期に適切な支援(治療や予防)を受ければ生活機能の維持、向上を図ることができると考えられています。

フレイルの診断基準

フレイルの診断基準

フレイルは、体重の減少、疲れやすさ、歩くスピードの低下、筋力・握力の低下、身体活動量の低下などを元に判断されます。

フレイルの原因

フレイルの原因

  • 加齢に伴う心身の変化(動くことが少なくなり筋力が低下、低栄養、転倒、歩くスピード低下、疲れやすくなる、嚥下・摂食障害)
  • 社会的面(他者との交流が減り、家に閉じこもりがちとなる、経済的な問題)
  • 精神面(意欲・判断力低下、元気がわかない)


これらの要因が重なって起こります。

フレイルの予防のポイント

フレイルの予防のポイント

  • 持病の治療を悪化させないこと。

糖尿病、心臓病、腎臓病、呼吸器疾患、整形外科的疾患などの持病をしっかり管理することが大切です。


  • 感染症の予防をする。

    免疫力が低下していることが多いため、感染症から身を守りましょう。(運動、食事に気をつけて免疫力を高める体作り、手洗い・うがいをする、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)を防ぐため、しっかりと口腔ケアをする等)


  • 日常生活に運動を取り入れる。

    毎日続けられるウォーキングなどで、体を動かしましょう。(筋力、筋肉量を向上、維持することがフレイルを予防し、進行をおさえることになります。)


  • バランスの良い食事をする。

    低栄養はフレイルの最大の要因です。一人暮らしは、食事の品数減少、食材が偏り、食欲も低下しがちです。低栄養になると免疫力低下、体力低下、筋肉量低下、骨量の減少に陥ります。栄養不足で運動しても筋力は維持できません。さまざまな栄養素をバランスよくしっかり摂取して、低栄養状態にならないようにしましょう。タンパク質、カルシウムを含む食品を積極的に摂りましょう。


  • 口腔・嚥下機能を保つ。

    歯が悪いと、食べ物をうまく飲み込めません。定期的に歯科健診を受けましょう。また、飲み込む力(嚥下機能)が弱くなると、食べ物や飲み物が気管に入る誤嚥が起きることもあります。必要と判断された場合は嚥下機能を保つリハビリを受けましょう。


  • 社会とのつながりを持つ。

    家族や友人、環境の変化により、外出する機会が減り、家に閉じこもりがちになると、フレイルの段階に進んでしまいます。人との関わりを持ち続けることが予防になります。

  • フレイル予防の基本は、バランスの良い食事と適度な運動

誰かと一緒にごはんを食べると楽しく食べられる、食欲が高まる、多様な食材が食べられるので予防に効果的です。また、ボランティア活動に参加したり、催し物に出かけたり、体を動かす時間を増やしましょう。デイサービスを利用するのも良いでしょう。また、食欲がない、元気がない、下痢や便秘が続き消化吸収機能が低下している時に、漢方薬が有効な場合があります。不調が続く時は早めに相談することも大切です。

(薬剤師 城戸 佳代子)

筋力を維持するためにはタンパク質を摂取することが必要ですが、タンパク質は、どのような食品に多く含まれますか?

筋力を維持するためにはタンパク質を摂取することが必要ですが、タンパク質は、どのような食品に多く含まれますか?

タンパク質が多い食品としては、肉類・魚介類・卵類・大豆製品・乳製品があげられます。
タンパク質を摂る際には、単一の食品ではなく、いくつかの食品を組み合わせて摂ると効果的だと言われています。食品だけで十分な量を摂るのが難しい場合は、補助食品を利用する方法もあります。

フレイルにはどのような漢方薬が使われますか?

フレイルにはどのような漢方薬が使われますか?

代表的な例としては、食欲の維持には六君子湯、気力・体力の衰えには補中益気湯、滋養強壮には牛車腎気丸などが使われます。
漢方薬は、その人の体質や体調により効果が違ってきますので、医師・薬剤師にご相談ください。

(薬剤師 城戸 佳代子)

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