誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)を起こさないために

特集 No.172 2021年1月発行

誤嚥性肺炎とは

肺炎は日本人の死因の第5位で、その9割以上が65才以上の高齢者です(2018年厚生労働省人口動態統計より)。
さらに、高齢者の肺炎の7~8割は誤嚥性肺炎だと言われています。
人間の喉は図のように食道と気道に分かれており、通常空気は気道へ、飲食物、唾液などは口から喉を通って食道へ送られます。
ところが、なんらかの原因で飲食物などが誤って気道から気管に入ってしまうことを誤嚥(ごえん)と言います。
この時、口の中に存在する細菌が食べ物や飲み物と共に気管から肺に入りこむと誤嚥性肺炎を引き起こします。


誤嚥(ごえん)とは
飲食物や唾液が誤って気管に入ってしまうこと

誤嚥性肺炎の症状

肺炎の典型的な症状は発熱・咳・痰などですが、風邪より重症で長引き息苦しさや胸の痛みを伴うこともあります。
ですが高齢者に多い誤嚥性肺炎の場合、この典型的な症状が現れないこともあります。
発熱を伴わず、いつもより元気がない、食欲がない、呼吸が浅く速いなどの症状でレントゲン撮影をして肺炎が確認される場合もあるので注意が必要です。

誤嚥性肺炎を起こさないためには?

普段からむせたり、せき込んだりしやすい人は知らず知らずのうちに誤嚥をおこしているのかもしれません。
誤嚥性肺炎をおこさないためのポイントをいくつか紹介します。

  • 姿勢
    食事のときは、背中を丸めたり椅子の背もたれによりかかったりせず、背筋を伸ばし、あごを引いた姿勢で食事に集中しましょう。
    寝たきりの人でも、食事のときは出来るだけ上体を起こした姿勢にしましょう。
    食後はすぐに横にならないことも大切です。
  • 食べ方
    食べ物は少しずつ口に入れ、よく噛んで、口の中の物を全て飲みこんでから次の食べ物を口に運ぶように心がけましょう。
  • 調理形態
    飲食物を飲みこみにくくなってきている人の場合は、必要に応じて半固形食にしたりとろみをつけたり、麺類はきざんで飲み込みやすい大きさにするなど調理形態を工夫しましょう。
  • 口の体操
    誤嚥を起こしにくくする訓練として、意識的に口や舌などの体操を行うことも飲み込む力をアップする効果があります。

    体操の一例・・・唇・頬の筋肉を強化する体操
    ①唇を出来るだけとがらせて「うー」という。
    ②次に唇をいっぱいに横に引いて「いー」という。
    ①、②を10回繰り返すことを1セットとして、3セットを1日2~3回繰り返す
    ※脳梗塞の後遺症やパーキンソン病などで言語聴覚士にアドバイスを受けている患者さんはその指示に従ってください。

  • 口の中の衛生
    口の中にいる細菌を減らすため、食後や寝る前は歯みがき・うがいなどで口の中を清潔に保ち、虫歯や歯周病をきちんと治療しましょう。
  • 服用薬のチェック
    睡眠剤や鎮静剤など薬によっては飲み込む力に影響を及ぼすものもあります。気になる方は、医師や薬剤師に相談してみましょう。
  • 免疫力をつける
    普段からバランスのよい食事や適度な運動・休息を心がけ、生活習慣病などの持病をきちんとコントロールすることで免疫力の低下を防ぐことも大切です。
  • 肺炎球菌ワクチンの接種
    高齢者がかかる肺炎の原因菌の中で肺炎球菌が最も多いとされているので、このワクチンを接種することによって予防効果と重症化を防ぐことが期待されます。65歳以上の方は公費助成制度もあるので、詳しくはかかりつけの医療機関にご相談ください。

誤嚥性肺炎の治療

治療の中心は抗生剤です。軽症の場合は内服薬で治療しますが、重症の場合は入院して注射や点滴で治療することもあります。
いずれの場合も原因菌をきちんと退治しなければ繰り返してしまいますし、抗生剤の効かない耐性菌の発生にも繋がります。
自己判断で通院や服薬を中断しないことが何よりも大切です。
そのほか、症状に応じて咳止めや痰きり、解熱剤などの薬や吸入薬などが使われます。

(薬剤師 在原 晶子)

新型コロナウイルス感染による肺炎が問題になっていますが、誤嚥性肺炎とはどのように見分けられるのですか?

初期の症状はどちらも似ていて症状だけでは見分けるのは困難です。
しかし誤嚥性肺炎は新型コロナウイルスと違い人から人に感染しません。
新型コロナウイルス感染者との濃厚接触や感染リスクの高い環境に出入りがなく、誤嚥を起こし易い要因(嚥下機能を低下させる病気や気道の慢性的な炎症、全身の衰弱など)がある高齢者の場合は、まず誤嚥性肺炎が疑われ治療が行われます。
新型コロナウイルス感染が疑われる場合にはPCR検査などのウイルス検査によって判断されます。
この時期、新型コロナウイルス感染ではないかと心配しないためにも、日ごろから誤嚥を起こさないよう心掛け、誤嚥性肺炎を予防することが大切です。

(薬剤師 在原 晶子)