脂肪肝について

特集 No.179 2022年3月発行

肝臓には胃や腸で分解・吸収された栄養素を利用しやすい物質にして貯蔵する役割があります。
そして必要に応じ、それらを分解してエネルギーなどを作り出します。
ところが、飲み過ぎや食べ過ぎなど必要以上のエネルギーを摂取すると肝臓に脂肪が多く蓄積し、肝臓機能低下の原因になります。
今回はそんな肝臓に関わる病気のお話です。

脂肪肝とは

脂肪肝とは

肝臓に中性脂肪がたまった状態を脂肪肝と呼びます。
必要以上のエネルギーはグリコーゲンや中性脂肪に作り替えられ、中性脂肪は内臓脂肪や皮下脂肪組織、肝臓にも貯蔵されます。

肝細胞の30%以上に中性脂肪がたまると脂肪肝と診断されます。

多量のアルコールを長期間飲み続けると、アルコールが分解される過程で中性脂肪が肝臓に蓄積されてしまい脂肪肝になります。

脂肪肝の分類

脂肪肝の分類

飲酒が原因の脂肪肝は、飲酒を止めれば短期間で改善するのが特徴です。

しかし、実は日本人の脂肪肝の原因で多いのは、飲み過ぎではなく、食べ過ぎによるものです。

これを非アルコール性脂肪性肝疾患と呼びます。
非アルコール性脂肪性肝疾患は症状が軽く改善しやすい単純性脂肪肝と重症タイプの非アルコール性脂肪肝炎(以下NASH、頭文字をとりナッシュと呼びます)の2種類があります。

健康診断を受けた方の30%前後が非アルコール性脂肪性肝疾患と診断されたとの報告もあり、特に男性は中年層、女性は高齢層に多い傾向があります。

脂肪肝の症状

脂肪肝の症状

近年、自覚症状として疲れやすさ、右上腹部不快感や睡眠障害などが起こることが分かってきました。

さらに重症タイプのNASHへ進行すると、うつや不安症状などの精神症状の割合が高くなるという報告もあります。

NASHが続くと、肝臓の細胞が長い時間壊れることで次第に線維化と呼ばれる正常に機能しない組織が形成されてしまいます。

この状態を放置すると約1~2割が肝硬変になります。

肝硬変まで進行すると回復は難しく、肝がんが発生しやすくなると言われています。

脂肪肝の改善方法

脂肪肝の改善方法

脂肪肝そのものへの治療薬について、現時点では実際に効能・効果が承認された薬はありません。

非アルコール性脂肪性肝疾患は生活習慣病と密接に関係しています。

食事療法、運動、禁酒を行い、肝臓にたまった中性脂肪を減らし肝機能の回復を目指しましょう。

しかし一時的に脂肪が減っても、生活習慣が元に戻れば再発します。

悪い生活習慣を改善するようにしましょう。

(薬剤師 佐々木 康行)

どうすれば脂肪肝だと分かりますか?

どうすれば脂肪肝だと分かりますか?

肝臓に脂肪がたまっている状態である脂肪肝を判別する最も簡便な方法は、腹部超音波検査(腹部エコー検査)です。

現在のところ通常の血液検査では非アルコール性脂肪肝を確実に診断する検査項目はありません。

肝機能検査で代表的なALT(GPT)値が低くてもNASHの場合があり、逆に数値が高くても病状が進行していない人もいます。

ALT(GPT)もAST(GOT)もどちらも高値の場合には肝障害が疑われますので受診して病院に相談しましょう。

(薬剤師 佐々木 康行)

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