口腔の機能

特集 No.182 2022年9月発行

秋はたくさんの食材が旬を迎えることから「食欲の秋」と言われますね。
今回はそんな「食」と密接な関わりを持つ口腔(こうくう)のお話です。


口腔には、食べる機能や、会話をしてコミュニケーションを取る機能などがあります。
食べるためには、歯で食物を噛み(咀嚼:そしゃく)、飲み込む(嚥下:えんげ)という一連の動作が必要になります。

1. 咀嚼

口の中に入った食べ物は、口唇・舌・頬・歯の協調的な動きにより細かくされ、飲み込むことで消化管に運ばれます。
口腔内で食物が粉砕されることで食物は嚥下しやすく、消化されやすくなります。また、噛むことはあごの骨や周囲の筋肉を発達させます。

2.味覚

味覚(みかく)は五感の一つで、おもに舌上面にある味蕾(みらい)と呼ばれるセンサーで受け取った味覚情報が脳に伝えられます。
味は甘味・酸味・塩味・苦味・うま味の5つがあります。
食物の美味しさを決定する要因には、味以外にも、におい・歯触り・舌触り・温度・色・体調などがあります。
このように味覚以外の嗅覚・視覚・記憶などの要素で拡張された感覚は風味と呼ばれ、その認識の過程を「味わう」と言います。

3.唾液

唾液には、次の機能があります。

  • 3-1.咀嚼・嚥下・消化吸収の補助作用

    唾液中のムチンという物質には強い粘性があり、食物を湿らせ、塊にして咀嚼と嚥下をしやすくする効果があります。また食物中の味物質が唾液中に溶けることで、味覚を感じるセンサーに届きやすくします。さらに唾液中の消化酵素は、食物のでんぷんを分解し、体内に吸収しやすくします。

  • 3-2.歯や粘膜の保護作用

    歯の表面は弱アルカリ性の唾液タンパクに覆われていることで、歯がすり減ったり、飲食物により口の中が酸性になり歯の表面からカルシウムが溶け出すことを防ぎます。口腔粘膜も唾液タンパクに覆われることにより、感染や傷から守られます。

3-3.抗菌・ガン予防・老化防止

唾液中のリゾチームは細菌の活動を抑える働きがあります。
またペルオキシダーゼは、発ガンや老化、動脈硬化の原因となる活性酸素を消す作用を持っています。
さらに唾液中に分泌されるホルモンの一種パロチンは老化防止効果をもつ物質として知られています。

このような多種多様な働きを持つ唾液ですが、年齢による唾液分泌量の低下や糖尿病・自己免疫疾患、さらにストレスによって減少することが知られています。

大唾液腺(耳下腺、顎下腺、舌下腺)マッサージをすることで唾液の分泌を促しましょう。

それでも改善しない場合は専門医へ相談してください。

なお、飲んでいる薬の影響で唾液の分泌量が減ることもあるので心配な方は医師・薬剤師へ相談しましょう。

唾液腺マッサージで口に潤いを




唾液によって口腔内が潤うことは、体全体の健康にも良い影響を与えます。
特に高齢者の方は、唾液の分泌量が低下するため、意識的に唾液腺マッサージを継続することをおすすめします。

唾液によって口腔内が潤うことは、体全体の健康にも良い影響を与えます。
特に高齢者の方は、唾液の分泌量が低下するため、意識的に唾液腺マッサージを継続することをおすすめします。

  • 【1】耳下腺マッサージ 人差し指から小指までの4本をほほにあて、上の奥歯のあたりを後ろから前へ向かって10回まわします。
  • 【2】顎下腺マッサージ 親指をあごの骨の内側のやわらかい部分にあて、耳の下からあごの下まで5カ所くらいを順番に押します。各ポイントずつ押しましょう。
  • 【3】舌下腺マッサージ 両手の親指をそろえ、あごの真下から舌を突き上げるように、10回ゆっくりグーッと押します。

(薬剤師 佐々木 康行)

口内炎の原因は?

口内炎の原因は?

口内炎はウィルスやカビが原因のもの、外的な刺激によって粘膜が傷ついてできるもの、喫煙が原因のものなど数種類あります。
しかし、最もよくみられる口内炎はアフタ性口内炎と呼ばれ、いまだにその原因は明らかになっていません。
ストレスや睡眠不足による免疫力の低下、ビタミンB2欠乏の栄養不足などが関係していると考えられています。
アフタ性口内炎は通常長くても2週間前後で自然に消滅してあとは残りませんが、それ以上痛みが続くようであれば歯科・耳鼻咽喉科などの専門機関を受診しましょう。

(薬剤師 佐々木 康行)

※記載された情報は発行日時点の情報です。
ご覧になった時点と情報が異なる可能性もありますので、あらかじめご了承ください。