腰痛と自律神経
腰痛に悩む人は国内で約3000万人以上存在すると言われており、日本人にとって国民病と言われています。
しかしその中の約8割は検査をしても原因不明なものがほとんどです。それには自律神経が深く関わっていると言われています。
今回は腰痛と自律神経の関わりについての特集です。
腰痛の原因
腰痛は原因がはっきりしているものとはっきりしないものがあります。
原因がはっきりしているものとして、「変形性脊椎症(へんけいせいせきついしょう)」、「脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)」、「椎間板(ついかんばん)ヘルニア」などがあります。
しかしこれらは全体の2割程度で多くの腰痛は原因がはっきりしていません。
レントゲン・CT・MRI などの検査を行ったとしても身体に異常が見つからないのです。
そんな腰痛の原因の1つに血のめぐりが悪いことがあげられます。
これらの要因として、姿勢の悪さ、筋肉の凝り、筋力低下などがあるということは想像できる方は多いかと思います。しかし精神的なストレスも要因の1つであるということはご存知でしょうか?過剰なストレスは自律神経が乱れる原因になります。次では腰痛と自律神経との関わりについてご紹介します。
腰痛と自律神経
血行不良による腰痛の原因の1つが「自律神経の乱れ」と言われています。
自律神経とは人間の内臓の動きや代謝、体温調節などを本人の意思とは関係なくコントロールしています。自律神経には交感神経と副交感神経の2種類
があり、バランスを保つことで体の状態を維持しています。
交感神経が優位になると呼吸や心拍数が速くなり、仕事や運動などの活動に適した状態になります。逆に副交感神経が優位になるとリラックスモードになり、休むのに最適な状態になります。このようにアクセルとブレーキの状態を自然に切り替えることで体内の状態を保っています。
しかしストレスなどで自律神経が乱れると交感神経と副交感神経との切り替えが難しくなります。バランスが乱れることで血流が悪くなり、腰痛などの体の不調が現れてくるようになります。特に原因不明の腰痛に悩む人は副交感神経が十分に高まらず、血行不良が起こっている場合が多いです。
自律神経を整えるためには?
では自律神経を整えるためにはどうしたらよいのでしょうか?
以下では簡単にできる方法をご紹介します。
●起床後は1 杯の水や白湯(さゆ)を飲むこと
固形より液体の方が消化のスイッチが入るのが早く、内臓が動くことで交感神経が動き出します。たくさんの水を一気に飲むと胃に強い刺激を与えるので、できるだけゆっくりと飲みましょう。また冷たい飲み物よりも常温やぬるめの白湯の方が胃への負担が小さく吸収もしやすいです。日中もこまめに水分補給を心がけることも大切です。1日で1~2L程度の水分摂取が目安です。
●39 ~ 40℃のお風呂につかること
熱すぎるお湯は交感神経の働きが高まるためリラックス効果が半減してしまいます。
少しぬるめのお湯に浸かることでじっくり体を温めることができ、15分程度で深部体温が徐々に上がっていきます。その際首までしっかり5分程度浸かり、残りの10分はお腹の浸かるぐらいの半身浴が効果的です。お風呂から出たあとはクーラーが効いた部屋は控えましょう。少し汗ばむ程度の室温で徐々に体温を下げていくのが最適です。
●腸のマッサージ
緊張やストレスで自律神経が乱れると腸のけいれんや、腸の動きの低下が起こることがあります。これも交感神経が高まっているのが原因です。
左右の肋骨の下や左右の腰骨を3分間ゆっくりも揉むことで腸の動きを活性化させ、副交感神経を高めることができます。またその4か所は便が溜まりやすい場所であり、揉むことで便通改善効果も期待できます。
●自律神経を整える呼吸方法
緊張状態になると交感神経が高まり呼吸が浅くなります。逆にリラックス状態になると呼吸は深くなり、副交感神経の方が高まっている状態です。
「1:2の呼吸方法」を行うことでリラックス効果を高めることができます。
ここまで腰痛対策の1つである自律神経の整え方について述べてきましたが、腰痛の中でも立てない程の急激な痛みを感じたり、安静にしていてもどんどん痛みが強くなる場合は注意が必要です。無理に我慢せず早めに整形外科などの専門医に相談しましょう。
(薬剤師 笠野 友美)
ご覧になった時点と情報が異なる可能性もありますので、あらかじめご了承ください。