3・11東日本大震災の宮城薬剤師支援の報告

トピックス 2011年6月1日 トピックス

伏古ひまわり薬局 
薬剤師 山口章江

 この度、全日本民医連の災害チーム派遣要請を受け、北海道からの第七次派遣として、4月16日~22日の日程で宮城県へ行ってきました。災害対策本部のある坂総合病院は、宮城県塩釜市に位置しており、津波の被害が大きかった七ヶ浜の地域を診療地域としています。震災直後から全国からの医療支援者が集まっていて、私が到着した日のレクチャーを受けた時点では、すでに合計1500人以上が支援に入っているとのことでした。

私たち支援者の居住環境は、外来診療を行っている坂総合病院クリニック一号館の5、8、9階部分を居住スペースとし、3階に食堂が用意されていました。一号館は、4月7日の巨大余震で、電気系等のトラブルがあり停電が続いていましたが、私達が到着したその日に復旧したとのこと。その他のライフラインも問題ないため、生活面で困ることはほとんどありませんでした。廊下での寝袋生活は人生で始めての経験でしたが、慣れるとなかなか快適なものでした。期間中、何度か震度3程度の余震がありましたが、特に被害もなく活動することがでしました。全国からの支援者は、主に避難所の医療チーム、足浴チーム、地域訪問チーム、長町クリニック片付けチーム、業務支援チームに別れていました。自分が何の仕事に当たるかは、前日の夜9時頃に対策本部前に張り出され、それを確認してから就寝するという日課でした。薬剤師の支援者は常時5~8人おり、避難所、病院、薬局と仕事を分担されていました。

私の支援活動一日目は、仙台市太白区の長町という地域の戸別訪問チームになりました。私は長町病院の診療地域である長町地域を戸別訪問。三人一組で、地図をみながら割当の地域を訪問しました。訪問の目的は、震災後に体調不良な方がいないか、被害で困っていることはないかなどの聞き取りです。長町は再開発地域のようで、新しい住居と古い住居が混在している町でした。新しい住居では、ほとんど被害はなかったようでしたが、築年数が30年以上あるようなアパートに住む高齢の女性からは、屋内のいたるところに亀裂が入り、応急手当をしてはいるが、いつ大きな余震がくるかわからない状況と不安な声が聞かれました。また、築50年という一軒家に一人で住んでいる高齢男性は、二階部分が修復不能な状態にまで壊れてしまい、一階も物が散乱している状態で生活を続けているとのこと。修理をしようにもお金がないとの訴えを聞きました。

二日目以降の仕事は調剤薬局のつばさ薬局での業務支援でした。坂総合病院の対応薬局である多賀城店は、薬剤師20名がいる普段でも忙しい薬局ですが、震災後は待ち時間が三、四時間の状態が続いていたそうです。私が支援に入ったころは、外来診療も通常に戻っており、だいぶ落ち着いて来たようですが、それでも午前中は90分待ちの状態。午前中は休憩も取らずにフル回転で仕事をしていました。毎日複数人の支援者が入っているとはいえ、自らも少なからず被害を受けながらも、過酷な業務を続けている職員の皆さんは、相当の疲労ではないかと想像されました。
また、薬局に来局される患者さんからは、さまざまなお話を聞くことができました。自宅が浸水し、徐々に片付けているが、粉塵のせいで咳が止まらないと訴える人。自分の家は被害がなかったが、親族10件が津波に流されたという人。自宅が流され、知人宅に身を寄せており、早く部屋を借りたいが、借家がなかなか見つからない人。そして、みなさん血圧は高めで、不眠と疲労を訴える人も多かったです。現住所が避難所となっている人も散見されました。

今回の支援では、災害時の薬剤師、薬局の役割の大きさを思い知らされました。特に、常備薬を持ち出せずに被災した人にとって、薬を提供できる薬局は命をつなぐ存在です。処方箋によらない緊急調剤という仕組みがあることも今回初めて知りました。また、震災当初は、職種に関わらず坂総合病院に運び込まれてくる患者をトリアージしていたそうですが、つばさ薬局の薬剤師もトリアージに参加したようです。参加した薬剤師さんからは、二度とは体験したくない経験だったと伺いました。災害という困難が状況においても、社会的な責任を全うしている被災地の医療者の皆さんの努力には頭が下がります。

 全国から集まった支援者同士は寝食を共にし、有意義な交流を行うことができたこともよい経験となりました。全日本民医連だけではなく、他の医療団体との連携もスムーズになれば、民医連の得意分野を生かして被災地全体に貢献できることでしょう。震災支援では、自分の専門分野にこだわらず、現地の人手に徹することが大切であることを痛感した1週間でした。被災地の復興までにはまだまだ継続した支援が必要となります。私も無二の経験ができたことを糧に、この経験を活かせる医療活動をしていきたいと感じています。